多周波数インピーダンス法とＥＣＵＭを利用した除水困難な高齢者への対応

９．多周波数インピーダンス法とＥＣＵＭを利用した除水困難な高齢者への対応

（医）泰玄会病院　血液浄化センター
　○ 柴田昌典、内山秀男、長井幸二郎、谷口信吉、宇佐美一政

【目的】除水困難な症例は日常臨床上対応に難渋することの多い、古くて新しい問題である。ときには無除水透析下でも血圧の低下や気分不良などをみることがある。我々はその原因として多周波数インピーダンス法により体内水分量の変動を測定し、血管内脱水の可能性とＥＣＵＭの有効な利用法につき、臨床上特に問題の多いと思われる高齢者の除水困難例につき検討した。
【対象】20名の透析患者で検討した（男12名、女8名）。そのうち70歳以上の高齢者6名（76.5±5.1歳、男1名、女5名）。70歳以下のもの14名（54.4±11.5歳、男11名、女3名）であった。
【方法】予定適正体重まで透析により除水し、その後無除水透析を行い、30分後、60分後に体水分量（TBW）、細胞外液量（ECW）、細胞内液量（ICW）を計測し、その経過を検討した。無除水透析中は一切の補液、飲食はしなかった。
【結果�考察】全症例でみると、無除水透析開始後30分、60分でTBW,ECW,は有意に低下した(p<0.05)。ところが70歳以上の高齢者の患者についてみると無除水透析下であってもECWの低下は著しく、25.15→24.31%となった(p<0.02)のに対し、非高齢者では23.89→23.52%(p=0.09)であった。無除水透析下でも血管内を含むECWからの水分の移動があり、血管内脱水の結果、血圧低下などの症状が生じることが示唆されるが高齢者においてはより顕著であると考えられる。この現象は透析開始後の血漿浸透圧の変化に起因すると考えられるが、透析中に適宜ECUM操作を組み込み適正体重までの除水が可能となるようにECUMを透析操作中のどの時点でどの程度の長さで行えばよいかにつき検討した。その結果高齢者では、透析に先立ち３０分から１時間程度ECUMを先行したときが血漿浸透圧の変化などからみて臨床的には最も有用であろうと思われる。